PREP(プレップ:夫婦関係改善と問題予防のプログラム)その6・「あのころ」に立ち返る

このブログを読んでくださっているみなさまは ご伴侶、パートナーさんと一緒になってからどのくらいになるでしょうか? もう結婚されてから、又は知り合ってから長いご関係ですか?もう長いご関係だとすると、家事や子育てなど、毎日お忙しくされている中で「カップル」というよりはどこか「生活共同体」だなあ…と感じておられる方もいらっしゃるのではないでしょうか。もちろん、日本とPREPの舞台となっている欧米は結婚観(カップル観)が違っているので、「夫婦生活とかいちゃいちゃが無くても幸せです」という方がいらっしゃっていてもおかしくないと思います。ただ、どうしてPREPが「ラブラブだったころ」に注目しているかというと、誰かが誰かを恋する時には人を動かす強いエネルギーが起こるからなのです。

これまでのPREPでは「危険信号」に着目するという趣旨でしたが、今回は180度回転して「ラブラブだったあのころに立ち返ろう」というテーマです。PREPについては、本文下をご参照ください。

今回のフォーカスは恋のエネルギー

実際にPREPコース上では一人一人が以下の質問に向き合います(PREPコース教材,2007年ヴァージョンより):

  1. 初めて彼・彼女に会った時どんなことに気が付きましたか?
  2. 出会った最初のころのデートはどんな感じでしたか?何をしましたか?何を話しましたか?
  3. 二人の関係はその後どんなふうに発展していきましたか?急激に、それとも徐々に?ロマンチックに?情熱的に?それとも日常っぽく?
  4. 二人はお互いのどこに惹かれたのですか?

ここで是非試していただきたいのは、パートナーさんと二人だけのゆったりした時間を作っていただいて、好きな飲み物でも飲みながら この質問に一緒に答えてみてください。そしてついでに、あのころの思い出話をしてみてください。日常のバタバタの中でのコミュニケーションとは、何か違った懐かしい・あったかい雰囲気になるかもしれません。

実はこの気持ちが生み出すエネルギーがかなり鍵となって来るんです。一緒に寝食を共にするって、最初はロマンチックだったとしても 家事や子育てなどに追われてしまってバタバタしますよね。ましてや、小さいお子さんがいたりするとなおのこと。バタバタに加え、二人とも寝不足だったりすると機嫌だって悪くなります。でも、週に一回でもいいからちょっとした時間を取って昔ばなしをすると 「ああ、この相手を選んだのには理由があった」と再確認できるものです。

恋が愛に変わっていく時…

以前、「愛を伝える5つの方法」という題でブログを書いていますが、この本を書かれたGary Chapman博士は、初期のラブラブは永遠には続かないと言っています。PREPでも、恋と愛の違いを「愛はお互いに対する態度と姿勢」と定義しています。一言で言うと、相手をまるごと認めようというポジティブな姿勢。恋する段階では相手はパーフェクトで、イマイチな部分や自分とは大きく違う部分は見えないことが多いかも知れませんが、恋が愛に移り変わる頃には相手のこういった「残念な」部分も容認することができているはずです。お互いにイマイチなところは分かっている、それでも認め合い一緒に人生をともにしたい。そんな安心感がカップルの関係において、それぞれがそれぞれの課題に向き合える力と勇気を与えてくれるものではないでしょうか。

Chapman博士のポイントは、相手の「愛情タンク」を自分がいっぱいに満たしてあげることにあります。つまり、相手が「愛されてる」と感じられる方法でコミュニケーション(時には何か具体的なこと)することにより、タンクが枯れることなく いつも「愛されてるな」と、のびのび安心して生活できる…ということなんです。もちろん、パートナーの「愛情タンク」を満タンにするのは常にできることではないのが現状だと思うのですが。ただ、満たしてあげたいと思い、意思表示するだけでも自分があなたの愛を確信できるのではないでしょうか。
相手の愛情タンクを満たしてあげることで、自分のタンクも満たしてもらえることが期待できるのではないでしょうか?もちろん、お互いに話し合って一緒に取り組むのが一番かとは思います。でも、何か小さなことでも変化すると連鎖反応的にまた何かが変化してくることが期待できるので、パートナーさんと合意ができなかった場合は自分からやってみるのも一つの方法です。「変えられるのは自分だけで、他人は変えられない」という感じですね。

まとめ

「ラブラブだったあの頃に立ち返る」ことは、簡単に言うと、お二人の関係にプラス要因をもたらすこと、とご理解いただくと良いと思います。ただ、欧米を舞台に開発されたカップルのコースだけに、すべての方に当てはまるかといえば、違うかもしれません。例えば、お見合い結婚で焦がれるような恋の段階はなかったという方もいらっしゃるかもしれませんし、日本文化ではラブラブがなくとも穏やかにお互いを信頼されていて、ご夫婦でいるのが当たり前と思っていらっしゃる方も欧米に比べ多いのではないでしょうか。それはそれで素晴らしいと思います。カップルの関係がさまざまなトラブルやネガティヴ要素に耐えられるという事ですよね。
ご夫婦・カップルのスタイルは千差万別であって、これが正しい・間違っているということではないのです。私は「日本昔ばなし」を見て育った世代ですが、ここに出てくるおじいさんとおばあさんの姿ってとっても良いな…と昔から思っていました。欧米のように、ハグやキスはないかも知れないけど、お互いお互いをいたわりあって支えているのが良く見て取れますよね。

今日も最後までお読みいただきありがとうございました!またPREPテキストの違うチャプターからアップしていきたいと思います。

 

PREP:夫婦関係改善と問題予防、なおかつ学んで練習してみるプログラム
PREPは英語のPrevention and Relationship Enhancement Programの略で、夫婦・カップルの関係を予防と強化するためのプログラムです。80年代に米国・コロラド州、デンバー大学の研究をもとに開発されたもので、それがModum Bad (モードゥム・バード)というノルウェーの精神保健研究施設で、ノルウェー仕様にアレンジされてきました。私はプライベートでも夫とミニ・コースに参加したことはあるのですが、2015年にコースリーダーの資格を取得した次第です。

フルのPREPコースは14章からなっており、自分たちのお互いとの関わり合い方(コミュニケーション)での危険因子を探ってみたり、コミュニケーションツール(スピーク&リッスンテクニック)があります。また、日常の様々な問題を建設的に解決する方法も学びます。その一方、二人の関係の強みを強化していくことにも注目します。まとめると、弱い所を補正して、強い所をより発展させていく。アメリカっぽい感じのプログラムです。

この記事を書いた人
may.juni

いがらしまゆみ。北海道出身。95年ノルウェーへ個人留学。貧乏学生時代を経て、現地で就職・結婚。20年以上のキャリアを持つ、ノルウェー公認ソーシャルワーカー。現在ノルウェー人夫とオスロ近郊で二人暮らし。日本人xノルウェー人カップルが持つ様々な問題・チャレンジに遭遇し、2018年にファミリーセラピーの修士課程卒業。現在、オスロ市で精神障害・精神疾患のユース世代の支援を本業とし、カウンセリングルーム・ハンブルネスは副業として従事。

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