前回は、「問題には種類がある」という視点について書きました。
日常の小さなイライラなのか、繰り返されるテーマなのか、それとも言葉にならない深いニーズなのか。
今回はその続きとして、では実際に、どうやって“良い解決”に近づいていくのかについてまとめてみたいと思います。
すべての問題に“解決”は必要?
私たちはつい、「問題=解決するもの」と考えがちです。でも実際には、そう単純ではありません。
PREPでは、問題に向き合う前にまずこう問いかけます。
「これは解決できる問題なのか?」
「それとも、理解しながら付き合っていく問題なのか?」
ここを見誤ると、解決できないものを無理に解決しようとして、かえって関係が苦しくなることがあります。
よくある難しいケース:再婚家庭の葛藤
たとえば、再婚家庭ではこんなテーマが生じることがあります。
- パートナーが前の結婚での子どもを優先する
- 元配偶者との連絡が続いている (子どもが元配偶者とパートナーのところを行き来するので、連絡は必須)
- 今の家庭とのバランスが取りづらい
このとき、もう一方のパートナーは、
「自分は後回しにされているのではないか」
「この関係の中で、自分の立場は何だろう」
と感じることがあります。一方で、子どもを持つ側のパートナーにとっては、
「親としての責任を果たしたい」
「子どもを大切にするのは当然のこと」
という、ごく自然で大切な思いがあります。例えば、ノルウェーではお父さんが離婚後、子どもを部分養育することはいたって普通なので、お母さんとお父さんのところに半々で住んでいる子どもや、週末はお父さんのところ…といった住形態になっているご家庭が多いのではと思います。
この問題が難しいのはどちらも正しいからなのです。これは「誰が悪いか」という問題ではなく、価値観や役割、人生の背景の違いに関わるテーマです。まして、一方が日本人だった場合は異文化で暮らしているため、「自分の立場」というテーマがもっとセンシティブになってしまうこともあるかもしれません。
結論から言うと、こうしたケースは多くの場合、“解決する問題”ではなく、“理解しながら付き合っていく問題” にあたります。
良い問題解決の第一歩は「整理」
問題に向き合う時、PREPではまず、「整理(ソーティング)」を重視します。
- 何について話しているのか
- どのレベルの問題なのか
- お互いはどう理解しているのか
ここがずれていると、会話はかみ合いません。いわゆる「話がすれ違う」状態になります。実際には、同じ問題でもお互いがまったく違うものを見ていることも少なくありません。
また、「とにかく話し合えばいい」という考え方もありますが、これも半分正しくて、半分危険です。話すことで理解が深まる場合もあれば、逆にプレッシャーや責め合いになってしまうこともあります。
特に、「なんでいつもそうなの?」「前から思ってたけど…」といった言い方になると、相手は問題ではなく“自分が責められている”と感じてしまいます。
同じ側に立つ
問題解決でとても大切なのは、パートナー同士が「どちらが悪いか」悪者探しをするのではなく、「問題は問題」として 二人が一緒に問題に向き合う意識を持つことです。つまり、「あなた vs 私」ではなく「私たち vs 問題」という立ち位置です。これができると、関係の緊張は大きく変わります。
PREPの問題解決ステップ
次にPREPで提唱している問題解決の流れをご紹介します。
① 問題を理解するための話し合い
② 問題に取り組むステップ:
ステップ① 問題をしぼる
ステップ② アイデアを出す(ブレインストーミング)
ステップ③ 合意と妥協
ステップ④ やってみて調整する
PREPのコーステキストにある例を交えながらステップを見てみたいと思います。
ケース:旅行に行きたい夫と、乗り気でない妻
夫の健一さんは、「久しぶりに二人で旅行に行こう」と提案します。でも妻の由美さんは、あまり乗り気ではありません。
ここでよくある展開は…
- 健一さん:「なんで行きたくないの?」
- 由美さん:「別に…忙しいし」
- 健一さん:(大切にされていないと感じる)
- 由美さん:(プレッシャーを感じて距離を取る)
こんな会話が何回か続くと、空気が悪くなってきますよね。
本当は何が起きているのか
このやり取りの表面だけを見ると、 「旅行に行くかどうか」の問題に見えます。でも実際には…
- 健一さん:一緒に過ごす時間を大切にしたい
- 由美さん:疲れていて余裕がない/負担に感じている
ここでいきなり解決しようとすると、「行く・行かない」「誰が正しい」の議論になってしまい、お互いを理解がないと責めたり、お互いを悪者にするといったことが起こります。そこで、問題に取り組むステップに入る前に、話し合いを持ち 前述のあるお互いの気持ちを理解することが不可欠です。
ステップ① 問題をしぼる
まず大切なのは、 何について話しているのかを明確にすること。この場合、
- 旅行そのものの話なのか
- 一緒に過ごす時間の話なのか
- 日常の負担の話なのか
を整理する必要があります。この話し合いの時にも「二人で問題に取り組む」意識が重要です。
ステップ② アイデアを出す(ブレインストーミング)
テーマが見えてきたら、次はアイデア出しです。ブレインストーミングは「いい」と思い付いたことをすべて評価をせずにとにかく自由に出してみます。例:
- 日帰りにする
- 家でゆっくり過ごす日を作る
- 由美さんが休める時間を先に確保する
- 別の日に計画する
ステップ③ 合意と妥協
出てきたアイデアの中から、二人が「これならできそう」というものを選びます。例:
- 今回は旅行は見送り
- 代わりに月1回「二人の時間」を作る
ステップ④ やってみて調整する
実際にやってみて、どうだったか、無理がなかったかを確認します。一度で二人が満足する結果にはならなくとも、次回にまた違うことを試せばいい…そんな感覚です。
また、すぐ答えや結論がでなくても良い…という気持ちも大切です。事柄によっては、時間を掛けて見えてくることもありますから。
また、このプロセスでは「相手を変える」という意識ではなく「一緒に考えていく」という意識の持ち方が問題解決が上手く行くヒントになります。
まとめ
今日のPREP章では、どうやって問題に向き合い、具体的に取り組んでいくか、という方法を例を含めてご紹介してきました。問題に向き合うとき、大切なのは:
- 問題の種類を見極めること
- すぐに解決しようとしないこと
- お互いを理解しようとすること
- 同じ側に立つこと
そして何より、お互いを 「理解すること」が、すでに大きな一歩であることです。
解決できる問題もあれば、一緒に抱えていく問題もあります。その違いに気づくことが、関係を少し楽にしてくれるかもしれません。
最後に二ーバーの祈りをご紹介します。(Reinhold Niebuhr)
“神よ、
変えられないものを受け入れる平静さと、
変えられるものを変える勇気と、
その違いを見分ける知恵をお与えください。“
今日も最後までお読みいただき、ありがとうございました!
PREP:夫婦関係改善と問題予防、なおかつ学んで練習してみるプログラム
PREPは英語のPrevention and Relationship Enhancement Programの略で、夫婦・カップルの関係を予防と強化するためのプログラムです。80年代に米国・コロラド州、デンバー大学の研究をもとに開発されたもので、それがModum Bad (モードゥム・バード)というノルウェーの精神保健研究施設で、ノルウェー仕様にアレンジされてきました。私はプライベートでも夫とミニ・コースに参加したことはあるのですが、2015年にコースリーダーの資格を取得した次第です。
フルのPREPコースは14章からなっており、自分たちのお互いとの関わり合い方(コミュニケーション)での危険因子を探ってみたり、コミュニケーションツール(スピーク&リッスンテクニック)があります。また、日常の様々な問題を建設的に解決する方法も学びます。その一方、二人の関係の強みを強化していくことにも注目します。まとめると、弱い所を補正して、強い所をより発展させていく。アメリカっぽい感じのプログラムです。

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