PREP(プレップ:夫婦関係改善と問題予防のプログラム)その12・ 相手を支える、支え合うとは?

前回の記事では、「問題を二人対一の構図で考えること」の大切さをご紹介しました。今回は、その続きとしてカップルがお互いに「支え合うこと」 がテーマです。PREPでは、「良いパートナーシップ」とは、大きな愛情表現よりも、“困った時に、この人は自分についていてくれる。自分の味方でいてくれる”という安心感があることだと考えます。

支えることは「解決すること」ではない

困っている人を見ると、私たちはつい「こうしたら?」「こうすればいいよ」とアドバイスをしたくなります。困っている人が笑顔になることを望んでいる…そんな本能的なことからかもしれません。もちろん、それが役立つ場面もあります。でもPREPでは、まず大切なのは「相手が何を必要としているのかを知ること」だと教えています。
ある人は話を最後まで聞いてほしいだけかもしれません。ある人は「大丈夫だよ」と安心させてほしい。またある人は、具体的な手伝いを求めているかもしれません。つまり、自分が支えているつもり(自分の視点から、相手がこうしてほしいだろうと思いしていること)と相手が支えられたと感じることは、必ずしも同じではないのです。

人によって「支えられた」と感じる方法は違う

PREPでは、愛情表現にも「言語」があるように、支え方にも一人ひとり違いがあると説明されています。

例えば、
・ただ隣にいてほしい人
・優しい言葉をかけてもらうと安心する人
・背中をさすってもらうだけで落ち着く人
・家事を代わってもらうことが何よりありがたい人
・「頑張ってるね」と認めてもらうことで元気になれる人

と、必要としているものは人それぞれです。

これは以前ブログでもご紹介した「愛情表現(Love Languages)」とも少し似ています。(興味のある方はこちら:https://mayumiigarashi.com/fivelovelanguages/)あくまでも、「自分がしてあげたい支え方」ではなく相手に届く支え方を知ることが大切なのです。

いろいろな「支え方」

さて、具体的にどんなふうに相手の支えとなるのか見ていきたいと思います。

1.相手のために時間をつくる。
スマートフォンを置いて、相手の話だけに集中する。途中で口を挟まず、最後まで耳を傾ける。「ちゃんと聞いてもらえた」という体験は、大きな安心感につながります。

2.スキンシップ
肩に手を置く。手を握る。そっと抱きしめる。もちろん相手との関係性にもよりますが、身体的な触れ合いには安心感を高め、ストレスを和らげる働きがあることも知られています。

3.何かを手伝う・してあげる
・子どもの送り迎えを代わる
・食事を作る
・試験勉強中の相手の家事を引き受ける

言葉だけではなく、「行動」で支えることも、大切なサポートです。

4.励ましの言葉をかける
「大丈夫。」「いつも頑張ってるね。」「ありがとう。」

こうした短い言葉でも、人は驚くほど救われることがあります。また、最後に私自身が挙げる例のように、その人その人にとっての「励ましワード」があるかもしれません。

良かれと思って…が逆効果になることも

この章ではまた、支える会話が、いつの間にか夫婦喧嘩になってしまうことがあるという例が挙げられています。
例えば、仕事で疲れている夫が悩みを話したのに、妻の方からの返答は「だから前から言ってたでしょう。」「あなたにも原因があるよ。」となってしまえば、相手は理解されたとは感じません。相談が、議論になってしまうのです。ただ、こういった会話は古今東西かなり「あるある」といったものかもしれません。私もついこんな風に夫に答えてしまいそうです。

せっかく心を開いてくれた相手が理解をされるどころか、非難をされてしまうのもかわいそうですし、相手もそんな答えが返って来ては、次からは何もシェアしてくれないかもしれません。ただ、私たちも人間ですからついつい相手からの相談をこんな風に返してしまうこともありますよね。そんな時は、一呼吸おいて「今は問題を解決する時間ではなく、相手を支える時間」なんだ…と、切り替えることが必要だとPREPは伝えています。

「どう支えてほしい?」

またPREPでは、とてもシンプルな質問を勧めています。
「今、私に何をしてほしい?」あるいは、
「私はどうしたらあなたの力になれる?」と、相手に聞いてみることです。
昔とある日本のNPOでチャットボランティアをしていた頃にも感じたのですが、本当に多くのご夫婦はこういった質問を相手にしません。きっとこうしてほしいはず、と想像だけで動いてしまいます。だからこそ、すれ違いが生まれます。日本では特に「以心伝心」という言葉がありますから、「言わなくても相手はわかるもの」といった期待がある方も多いかも知れません。

私自身が感じたこと

今回の章を読んで改めて感じたのは、支えることは、相手の人生を代わりに背負うことではないということでした。いくら一緒に寝食を共にしているパートナといえども、相手の問題を全部解決することはできません。でも、「あなたは一人ではない。」「私はあなたの味方です。」という姿勢は伝えることができます。そして、その積み重ねが、困難な時期を一緒に乗り越える力になるのではないでしょうか。

もうひとつ、私自身の結婚生活から感じた視点もあります。それは、相手ができる支え方を自分からリクエストしてみる…と、いうもの。先の例で言えば、私もアドバイスではなく他の事が心の支えになることが多々あります。そんな時は夫に、「アドバイスは必要ない」とはっきり伝えることにしています。また、何が自分にとって言ってもらえるとはげまされるのか、というのも伝えるようにしています。性格的には自分は昔からはっきりしている(と、よく言われてきました)方なのですが、特にノルウェー生まれ・ノルウェー育ちの夫と一緒になってからは、いっそうはっきり伝えることを意識していると思います。ただでさえ、言葉・文化の違いで勘違いや思い違いが頻発している環境なのですから…。ちなみに、私の「励ましワード」は「君はこれ以上なにもしなくていい」です。こう夫から言ってもらうと、なんだか魔法のようにスッとリラックスできます。

おわりに

PREPでは、良い関係を長続きさせるために必要なのは、特別なテクニックよりも、日常の中で相手を気にかけ、小さな支えを積み重ねることだと繰り返し伝えています。困ったときだけではなく、普段から「支え合える関係」を育てること。それが、安心して帰ってこられるパートナーシップにつながるのかもしれません。

PREP:夫婦関係改善と問題予防、なおかつ学んで練習してみるプログラム
PREPは英語のPrevention and Relationship Enhancement Programの略で、夫婦・カップルの関係を予防と強化するためのプログラムです。80年代に米国・コロラド州、デンバー大学の研究をもとに開発されたもので、それがModum Bad (モードゥム・バード)というノルウェーの精神保健研究施設で、ノルウェー仕様にアレンジされてきました。私はプライベートでも夫とミニ・コースに参加したことはあるのですが、2015年にコースリーダーの資格を取得した次第です。
フルのPREPコースは14章からなっており、自分たちのお互いとの関わり合い方(コミュニケーション)での危険因子を探ってみたり、コミュニケーションツール(スピーク&リッスンテクニック)があります。また、日常の様々な問題を建設的に解決する方法も学びます。その一方、二人の関係の強みを強化していくことにも注目します。まとめると、弱い所を補正して、強い所をより発展させていく。アメリカっぽい感じのプログラムです。

この記事を書いた人
may.juni

いがらしまゆみ。北海道出身。95年個人留学でノルウェーへ。貧乏学生時代を経て、現地で就職・結婚。国際結婚カップルが持つ様々な問題・チャレンジに遭遇し、2018年にファミリーセラピー修士課程卒業。現在、オスロ市で発達障害・精神疾患のユース世代の支援を本業とする傍ら、ハンブルネスは副業として従事。ノルウェー人夫とオスロ近郊で二人暮らし。

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