PREP(プレップ:夫婦関係改善と問題予防のプログラム)その10・問題って何?―表面の奥にある本当のテーマ

PREPシリーズも中盤に来ました。今回のテーマはすれ違いの奥にあるものを見つける…という、ちょっと深堀な内容です。

パートナーとの間で起こる衝突は、実は「ささいな出来事」から始まることが少なくありません。約束を忘れる、帰宅が遅れる、ちょっとした言い方――。日常のどこにでもある出来事です。

でも本当の問題は、そうした出来事そのものではなく、その奥にある「もっと大切な何か」であることが多いのです。


小さな出来事が大きな衝突になる理由

日常のちょっとしたトラブルは、きっかけに過ぎず、実際に私たちが反応しているのは:
・優先順位の違い (価値観の違い)
・期待のズレ (心の奥にあるニーズ)
・積み重なった不満 (繰り返されるテーマ)

などと結びついて、思いがけず大きな対立へと発展します。たとえば「請求書をどう支払うか」という話が、いつの間にか「あなたは無責任だ」という非難に変わってしまうこともあります。つまり問題は“別のレベル”にあることが多く、私たちは、目の前の出来事ではなく“意味”に反応しているのです。


問題を整理することの大切さ

問題を扱う第一歩は、「何が起きているのか」を整理することです。

  • これは一時的な出来事なのか
  • それとも繰り返されるテーマ(デリケートな問題)なのか
  • どのレベルの問題なのか

これを整理せずに話すと、お互いが「違うこと」を話してしまい、すれ違いが起こります。まずは「今、何について話しているのか」を共有することがとても大切です。また、これを見極めるだけで、対話の質は大きく変わります。


「デリケートなテーマ」の存在

関係の中には、繰り返し現れるテーマがあります。お金、家事分担、親族との関係、子育て…。またあるカップルは性生活についてのズレも感じているかも知れません。(特にお相手が欧米の方で国際結婚をされている場合は、日本における夫婦生活のあり方と、感覚が違うことが多いかも知れません。)

こうしたテーマは、価値観や期待と深く結びついているため、感情が強く動きやすい領域です。また、ストレスが高いときほど、私たちは冷静に考えにくくなります。
だからこそ、落ち着いているときに話すことがとても大切です。


表面の下にある「本当のニーズ」

PREPで特に重要とされているのが、「表面の下にあるニーズ(本当の気持ち)」に気づくことです。それは、本音に自分で気づいていなかったり、上手く言葉にできないなどで、怒りや不満として表してしまうことが多いのです。

また、私たちは皆「このままの自分を受け入れてほしい」という願いを持っています。
・大切にされたい
・認められたい
・安心したい
・支えてほしい

と、同時に大切な相手から拒絶されることへの恐れも抱えています。この恐れは、相手に合わせすぎたり、本音を言えないなどといった行動で表れ、その結果、さらにすれ違いが深まることもあります。こういったことに気づかないままだと、会話は表面的な言い争いにとどまってしまいます。

また、すれ違いが起きる時は「私は頑張っている」と思っている側と「全然足りない」と感じる側に分かれ、このズレが、「理解されていない」という感覚を生みます。さらに、過去の経験や不安が影響すると、相手の言動をよりネガティブに解釈してしまうこともあります。


解決よりも「理解」を

こうしたテーマに向き合うとき、大切なのは「すぐに解決すること」ではありません。むしろ重要なのは、お互いを理解しようとすることです。なぜそう感じるのか、何を求めているのか。それを丁寧に共有することで、対立の強さは少しずつ和らいでいきます。関係の中には、明確な答えがない問題もあります。価値観の違い、感じ方の違い、優先順位の違い…。これらは解決しようとしても無理なことが多く、理解と折り合いをつけていくものです。
また、こうしたコミュニケーションの中で、「自分は大切にされている」という感覚により、関係の安心感も育んでいけると思います。


深い傷には時間と対話が必要

また、問題の種類によっては相手が深く傷つき、解決には辛抱強く時間を掛ける必要があります。こういった問題とは、例えば:
・浮気
・信頼を損なう出来事
・隠し事 (特に金銭的な)

こうした問題は、すぐに乗り越えられるものではありません。時間をかけて、繰り返し対話を重ねていく必要があります。


まとめ:問題の奥を見る

今日取り上げた章は、もしかすると長期で関係が続いているカップルが特に直面する状況かもしれません。ある一定期間一緒に生活する中で、どうしても いろいろなところで行き違いや意見の相違が起こるものです。こんな時、衝突することも日常でひんぱんに起こっているかも知れません。
そんな時の問題解決の鍵は、「何が起きたか」だけでなく、「その奥に何があるのか」に目を向けることです。以下を試してみていただくことをお勧めします:

  • 小さな出来事にとらわれすぎない
  • 繰り返されるテーマに気づく
  • 自分の本当の気持ちを理解する

そうすることで、ただ対立してぶつかっているのではなしに、お互いの理解を深めるチャンスに変わっていきます。

***

今回のテーマはいかがでしたでしょうか?次回PREPでは、本当の問題に迫ったあと、どうやったら一緒に解決していくのか…をお伝えしたいと思います。最後までお読みいただき、ありがとうございました!

PREP:夫婦関係改善と問題予防、なおかつ学んで練習してみるプログラム
PREPは英語のPrevention and Relationship Enhancement Programの略で、夫婦・カップルの関係を予防と強化するためのプログラムです。80年代に米国・コロラド州、デンバー大学の研究をもとに開発されたもので、それがModum Bad (モードゥム・バード)というノルウェーの精神保健研究施設で、ノルウェー仕様にアレンジされてきました。私はプライベートでも夫とミニ・コースに参加したことはあるのですが、2015年にコースリーダーの資格を取得した次第です。
フルのPREPコースは14章からなっており、自分たちのお互いとの関わり合い方(コミュニケーション)での危険因子を探ってみたり、コミュニケーションツール(スピーク&リッスンテクニック)があります。また、日常の様々な問題を建設的に解決する方法も学びます。その一方、二人の関係の強みを強化していくことにも注目します。まとめると、弱い所を補正して、強い所をより発展させていく。アメリカっぽい感じのプログラムです。

この記事を書いた人
may.juni

いがらしまゆみ。北海道出身。95年個人留学でノルウェーへ。貧乏学生時代を経て、現地で就職・結婚。国際結婚カップルが持つ様々な問題・チャレンジに遭遇し、2018年にファミリーセラピー修士課程卒業。現在、オスロ市で発達障害・精神疾患のユース世代の支援を本業とする傍ら、ハンブルネスは副業として従事。ノルウェー人夫とオスロ近郊で二人暮らし。

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