2年ほど前より本格的に学び、実践してきたオープンダイアローグ https://mayumiigarashi.com/opendialogue/。昨年11月、ノルウェー・トロンハイムで開催された「全国ネットワーク集会」に参加しました。歴史ある大司教館(Erkebispegården)という静かな場所で行われたこの集会には、医療、福祉、教育、行政など、さまざまな分野で「対話」を大切にしてきた実践者や研究者が集まっていました。
オープンダイアローグとは?
オープンダイアローグは、もともと1980年代にフィンランドで、精神科病院における統合失調症の急性期支援として始まったアプローチです。
特徴は、
・問題を「個人の中」だけに閉じ込めず
・本人、家族、支援者など関係者全員が同じ場に集まり
・解決や結論を急がず、「その場で起きている対話」を大切にすること
・また、利用者さんを支援者と同じ一個人としてリスペクトする姿勢
診断や解釈よりも、「いま、ここで、何が語られているか」「どんな声が聞こえていないか」に耳を澄ませる姿勢が重視されます。
日本ではまだあまり知られていませんが、現在では精神医療に限らず、子ども・若者支援、学校、依存症支援、地域支援など、さまざまな分野で実践されています。
カンファレンスのテーマ&内容
・オープンダイアローグ
・ネットワーク志向の支援・実践
の二つのテーマを軸に、医療・福祉・教育・行政など多様な分野の実践者・研究者が集まり、経験や知見を共有する全国規模のネットワーク集会でした。
「対話とは何か」「支援とは誰のものか」「専門職の役割とは」
といった根本的な問いが、実践に根ざした形で語られていました。
特に印象に残ったプログラムからの抜粋
自治体による実践報告
4つの自治体から、ネットワークミーティングとオープンダイアローグの実践例が紹介されました。
・学校における保護者・教職員・子どもをつなぐネットワークミーティング
・子ども・若者支援の現場での対話的アプローチ
・自治体全体でオープンダイアローグを根づかせようとする試み
それぞれの地域性や課題に応じた工夫が共有され、「正解は一つではない」というメッセージが強く伝わってきました。
「状況について話す」から「状況の中で話す」へ
医療・依存症支援・家族支援の現場からは、専門家が外側から語るのではなく、当事者とともに“その場で対話する”ことの意味が語られました。
対話は技法ではなく、姿勢であり関係性そのものであるという視点が印象的でした。
利用者・家族の声から考える「これから」
最終セッションでは、当事者・家族団体からのリフレクションが共有されました。支援を「提供する側/受ける側」に分けるのではなく、ともに考え、ともに対話する関係性をどう育てていくのか。
カンファレンス全体を締めくくるにふさわしい時間でした。
草の根から続いてきた実践
今回のカンファレンスで、特に心に残ったのは、
現在「確立した実践」として紹介されている方々の多くが、最初はとても孤独な立場で始めていたということでした。主に:
・同僚や上司に理解されない
・「それはやり方としておかしい」「非効率だ」と言われる
・組織の中で軽視されたり、無視されたりする
それでも、何年も、時には十数年も、対話をあきらめずに続けてきた人たちがいました。成功事例として語られる背景には、そうした「報われない時間」が確かに存在していたのだと、あらためて感じました。また、私たち新参者に対するメッセージは、時間はかかると思ってあきらめない事、またリーダーや事業主にできるだけ参加してもらい、理解を深めてもらう…などでした。
対話は「技法」ではなく「姿勢」
オープンダイアローグにおけるミーティングは、特別な技法というよりも、あくまでアプローチ(進め方、やり方)であり、従来の医師や支援者が利用者さんと行うミーティングとは一線を画するものがあります。ミーティング参加者の自由な発言により対話が進みますので、時には予期しない方向に話が進むなど、不安材料にも耐えなければなりません。また、相手を急いで理解した気にならないことや「正しさ」より「関係性」を大切にすることなど、そうした姿勢の積み重ねがミーティングリーダーとして成熟するのには不可欠です。時間も手間もかかりますし、効率的とは言えない場面もあります。
それでも、人と人が本当に出会うためには、この「遠回り」が必要なのだと感じました。
おわりに
今回のカンファレンスを通して、私の本業のユース世代支援もさることながら、自身の副業であるカウンセリングの仕事についても、あらためて考える機会になりました。
これまで、ご家族やカップルのカウンセリングをさせていただいてきましたが、オープンダイアローグの考え方に触れれば触れるほど、「問題を一人の中で完結させない関わり方」、ご家族や周囲のネットワークを念頭に置いた支援は本当に大切なんだ、という思いが強くなっています。
ただ、個人のカウンセリングルームでは、同僚や、役割を分担できるチームがいるわけではありませんので、現実的な制約もあります。ミーティングの中核となるリフレクティングは一人で行うため、推奨される方法をそのまま実践することは、正直なところ難しいです。
ただ、それでも今回の集会を通して感じたのは、オープンダイアローグは形式を真似ることよりも、姿勢をどう持つかが本質なのではないか、ということでした。自分なりの形で、対話に開かれたカウンセリングを模索していく。今回のカンファレンスは、
その模索を続けていていいのだ、と背中を押してくれる時間でもありました。
日本ではまだ馴染みの薄いオープンダイアローグですが、だからこそ、「完成された方法」としてではなく、問いやヒントとして紹介していきたいと思っています。
このブログも、その試みのひとつです。
ここから、本業でも、こちらのカウンセリングルームでも、自分の現場に合ったかたちを、少しずつ探していけたらと思います。最後までお読みいただき、ありがとうございました。


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