PREP(プレップ:夫婦関係改善と問題予防のプログラム)その7・安心できるコミュニケーションのすすめ

今回のブログはPREPの「肝」とも言える、コミュニケーションの具体的な方法についてご紹介します。ノルウェー語では「tale-lytteteknikken」(話す・聴く技法)と呼んでいます。そのテクニックのやり方に移る前に、少し健全なコミュニケーションについてお伝えします。PREPについてのブログを初めて読まれる方は、ページの一番最後をご覧ください。


安心できるつながりとは

人との関係、とくにパートナーシップにおいて「安心して話せること」はとても大切です。良い関係には、お互いの意見や気持ちを自由に表現できる「安心感」が欠かせません。しかし、相手とのつながりが脅かされると、人は防御的になり、攻撃したり引きこもったりしがちです。その結果、関係の基盤が揺らぎ、信頼が損なわれてしまいます。

コミュニケーションは「人と人をつなぐ橋」。橋を強くすることも壊すこともできる力を持っています。だからこそ、誤解が生じたときには修正し合い、互いを遠ざけないことが大切です。


5つのコミュニケーションの姿勢

良い会話を支えるためには、単なるテクニックではなく「姿勢や心がけ」が必要です。ここでは5つの大切なポイントを紹介します。

  • 承認(Anerkjennelse, 英:recognition)
    相手の考えや感情を尊重し、違いを認め合う。相手の弱い部分も丁寧に扱う姿勢。
  • 好奇心(Nysgjerrighet, 英:curiosity)
    相手が何を伝えたいのかに関心を持ち、真剣に耳を傾ける。関心を示すことで、相手も心を開きやすくなる。
  • 開いた心(Åpenhet, 英: openness)
    自分の気持ちを率直に表現し、相手が心を開いた内容も受け止める。時には自分の意見や態度を見直す柔軟さも必要。
  • タイミング(Timing, 英:timing)
    状況や相手の状態を見極め、適切な場と時間で話を切り出す。相手が疲れている時や忙しい時に大事な話を持ち出すと逆効果になるため、適切なタイミングで対話することが大切。
  • 優しさ(Vennlighet, 英:kindness)
    たとえ相手を断るときでも、思いやりを忘れない。親切さは安心感を育て、良い関係を促進する。

これらは、自分の姿勢や心がけとして育てていくべきものであり、誤解を減らし、信頼できる対話をつくるための土台になります。

話す・聴く技法(Tale-lytteteknikken)

さて、いよいよテクニックの説明に入ります。これは、互いに安心して発言できるようルールを決めて対話を行う方法です。例えば、以前のブログでお伝えしたような、日々のコミュニケーションがなかなか上手く行かない…と感じていらっしゃるカップルや、特に難しいテーマをしっかりと話し合う場合に有効な「ツール」として、PREPでは推奨しています。コミュニケーションが上手く行かず、ケンカ別れやどちらか一方が去ってしまう話し合いの時は、「ちゃんと相手は聴いていない」と感じていることが多いものです。
私もこのテクニックに初めて出会った時は「なんか大げさだな」たか「わざとらしい」と思ったのですが、試してみると不思議に夫も私も納得しました。お互いの意見をとことん、はやとちりや誤解なくちゃんと聞いて理解することができたからです。私たち夫婦は多文化カップルで、母国語も文化背景も違うので「わかったつもり」でいても、実はちゃんと理解できていなかった…ということが、よくあるのです。

目的
感情的な反応や対立に陥らないようにし、互いの発言を尊重して理解を深めること。構造化されたルールが「会話の足場」となり、信頼関係を守りながら建設的な対話を可能にする。

基本ルール

役割分担:一人が「話す人」、もう一人が「聴く人」になる。

話す人のルール
1.自分のことを語る(相手を非難せず「私は…」で話す。例:私は毎日仕事で帰ってきてくたくただけど、それがわかってもらえていない気がするの。)
2.短く、具体的に。(できたら一行ずつで、聴き手にマイクを渡す。)
3.言い終えたら「マイク」を渡す。

聴く人のルール
1.相手の言葉を自分の言葉で繰り返して要約する。(例:僕が聴いたのは、君は仕事の後、くたくたになるけど、それが僕にわかってもらえていない気がしている。)
2.相手の伝えたいこと(感情や意図)を理解することに集中する。
3.途中で反論や自分の意見を挟まない。

共通ルール
1.発言権を持つ人が話す。発言権は、話す人ー聞く人―話す人、の順で頻繁に交代してください。なお、「マイク」となるようなものなら、ペンでも何でもよいので、発言者が手に実際にもっていると、より効果的です。
2.マイクを持っている間は相方は途中で遮らない。
3.お互いが納得したら交代する。

効果
1.話のタイミングを整えることで、誤解や衝突を防ぐ。
2.発言しにくい人も安心して話せるようになる。
3.攻撃や防御のパターンを断ち切り、健全な会話を再構築する。

なお、このテクニックを使って対話をする際は、事前にお子様がお休みになった後など、お二人だけでゆっくりできる時間を作ってください。また、好きな音楽をBGMにしたり、温かい飲みものを飲みながら…という感じで、ゆったりとくつろげる雰囲気づくりもお勧めします。雰囲気が良く、心に余裕があると、難しく感じるような話題でも大丈夫になることが多いです。


まとめ

健全なコミュニケーションは、テクニックよりも「姿勢」と「安心感」が鍵となります。承認・好奇心・開放性・タイミング・優しさ、この5つを意識しながら、必要に応じて「話す・聴く技法」を使うことで、信頼できる関係を育てることができます。

安心して話せる環境を整えること。それが、長く続く良い関係の土台となるのです。ちょっと初めは抵抗があるかも知れませんが、一度試してみてください。今日も最後までお読みいただき、ありがとうございました!

 

PREP:夫婦関係改善と問題予防、なおかつ学んで練習してみるプログラム
PREPは英語のPrevention and Relationship Enhancement Programの略で、夫婦・カップルの関係を予防と強化するためのプログラムです。80年代に米国・コロラド州、デンバー大学の研究をもとに開発されたもので、それがModum Bad (モードゥム・バード)というノルウェーの精神保健研究施設で、ノルウェー仕様にアレンジされてきました。私はプライベートでも夫とミニ・コースに参加したことはあるのですが、2015年にコースリーダーの資格を取得した次第です。

フルのPREPコースは14章からなっており、自分たちのお互いとの関わり合い方(コミュニケーション)での危険因子を探ってみたり、コミュニケーションツール(スピーク&リッスンテクニック)があります。また、日常の様々な問題を建設的に解決する方法も学びます。その一方、二人の関係の強みを強化していくことにも注目します。まとめると、弱い所を補正して、強い所をより発展させていく。アメリカっぽい感じのプログラムです。

この記事を書いた人
may.juni

いがらしまゆみ。北海道出身。95年個人留学でノルウェーへ。貧乏学生時代を経て、現地で就職・結婚。国際結婚カップルが持つ様々な問題・チャレンジに遭遇し、2018年にファミリーセラピー修士課程卒業。現在、オスロ市で発達障害・精神疾患のユース世代の支援を本業とする傍ら、ハンブルネスは副業として従事。ノルウェー人夫とオスロ近郊で二人暮らし。

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